
他劇場の倍出すからと言えば役者は乗ってくるでしょうけれども、それではやはりプロデューサーの仕事はあり得ませんので、そういう一部の大手代理店がやっているようなやり方は、劇場のプロデューサーはできない。幾ら親方日の丸でもできないということになります。それがアートマネージメントの非常に難しいところかと思います。 特に東京から大阪へ参りまして一番のネックは、やはり滞在に関する交通費、滞在費のプラスアルファでございます。東京では1万円で見せたものが、大阪では本来ならば1万1000円取らないとペイできないんですけれども、大阪というところは非常に計算高い土地でございますので、東京で1万円のものを9500円で、あるいは9800円で見せてちょうど当たり前みたいなところです。ですから、東京から北海道へ呼べぱ、それだけ費用がかさむというのが当たり前のことなんですけれども、そういう意味でのアートマネージメントというのは、何か指の先に灯をともすようなこともやらざるを得ないということです。ただ、それが非常にうまくいきまして、適正な料金で提供をして、しかも利益を生む、こんなにうれしいことはないわけです。 商業劇場の実態を暴露しますと、例えば梅田コマ劇場は今「劇場飛天」というふうに建てかわっておりまして、旧来のプロセニアム劇場に戻ったわけですけれども、歌手公演であれ、東宝制作の女優芝居であれ何であれ、損益分岐点を55%ぐらいに設定して料金を決めます。料金の決め方というのは、皆さんはどうされているかわかりませんが、まず仕込みが決定して、その仕込みを55%にする計算で観劇料金をつくるというのが商業劇場のやり方です。ですから、「シアターガイド」という雑誌に上杉祥三さんという俳優が、商業劇場の料金が高過ぎるぞ、こういうことでは商業劇場は存続しないぞというようなエッセーを書かれておりましたけれども、これは全くの正論でございまして、こういう料金設定をしている東西の、松竹、東宝、あるいはコマ劇場、そういう演劇が今後本当に正味の値段を払ってどれだけのお客さんに来てもらえるのかというのは先行き非常に暗たんたるものがございます。 私どもの劇場の方針はやや違っておりまして、それはなぜかと申しますと、これは私どもだけの例ですけれども、ドラマシティという劇場はコマ・スタジアムが大家なんです。そこから阪急電車がつくりました株式会社シアター・ドラマシティが借り受けまして運営をしている、こういうことなんですが、大家に巨額な家賃を払わなくてはならない。その家賃を計算して1日の費用を出しますと、人件費とかもろもろすべてを入れまして200万かかるわけですね。じゃ、200万で小屋貸しが成立するのか、とてもじゃないけれども、
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